
頭の良さ≠幸せ『アルジャーノンに花束を』書評&レビュー
本の概要
『アルジャーノンに花束を』(原題:Flowers for Algernon)は、アメリカの作家ダニエル・キイスによるSF小説であり、1966年に発表された長編版はネビュラ賞(SF界で威厳と名誉両方ある賞)を受賞しています。本作は、人間の知性と感情、科学の進歩、人体実験の成功とその代償をテーマにした感動的な物語です。本作の主人公「チャーリィ・ゴードン」は、知的障害を持つ32歳の男性で、画期的な手術によって知能を劇的に向上させる実験の被験者となります。その過程を彼自身の日記形式で体験することができるのが、本作の最大の魅力です。
背景と出版の経緯
軽く「アルジャーノンに花束を」の歴史を解説します。
『アルジャーノンに花束を』はもともと1959年に短編として発表された短編小説でした。その後、読者の反響を受けて長編化されることとなり、作品のテーマやキャラクターの深みがさらに増しました。短編版と長編版では展開や細部に違いがあり、読み比べると物語の見方が広がります。(著者は長編版のみ読破)
また、科学技術が急速に進歩する中で執筆された本作は、今読んでも遜色ない人体実験や知能、そして人間としての幸福に焦点が当てられています。。
あらすじ
物語は、チャーリィが手術を受ける前の日記から始まります。文章は簡単で、誤字や文法ミスが多いですが(例 progris-> progress)、それが彼の知能の状態をリアルに反映しています。手術後、彼の知性は急速に向上し、周囲の人々との関係性が大きく変化していきます。本をたくさん読めるようになったり、多言語を学んだり、彼女ができたり… そんな中チャーリーはある日、チャーリーより先に手術を受けたネズミのアルジャーノンの様子がおかしいことに気づき?!
日記の文体が主人公の知能の変化と共に進化する点が、本作の大きな特徴です。初期のつたなく理解が難しい文章から、学術的で洗練された表現へと変化し、まさに行と行の間を読むことができ面白いです。
本作が扱うテーマ
少し本作のテーマを自分なりに考察(ネタバレは極力避けたもの)を含めて書いてみました。
知能と「しあわせ」
知能≠幸せ。一見知能が高ければ高いほど良いと思われがちですが、知能もありすぎると弊害があります。大きく三つに分けると…
人間関係の崩壊:
→他の人間が自分のことを避け始めるか、自分が退屈になって避けるようになる->話しかけられる人が少なくなる
知識習得の限界
→どんなに頭が良くてもやはり獲得できる知識には限りがある。よって、他の分野の教授などと話しても全てを学ぶことはできない。 知らないことが怖くなる→現実でも頭がかなり良いと起こりがちですが、知らないことに対して恐怖を持つようになります。 人体実験?
チャーリーは人間で初めてこの手術を受けた被験者になった。1960年代に書かれた当時の価値観が少しこのテーマには残っていますが、今考えると少し道徳的にどうなのかな?と思う人もいると思います。
「アルジャーノンに花束を」を読むメリット
「アルジャーノンに花束を」を読む理由をまとめると以下のようになります。
現実的なSFでチャーリーに感情移入がしやすい→壮大すぎる話が嫌いな人も読める&壮大な話が好きな人もかなり内容が深いので飽きない。 日記形式で進む→多くのフィクション本では味わえない新しいスタイルで読むことができる 哲学的テーマ→タイトル回収も綺麗で読み終わると少し賢くなれる。
原書(英語版)を絶対に読むべき理由
おそらく本作が「どんな本なのか?」、「何が良いのか?」は分かったと思うのですが、一応補足としてなぜ訳版ではなく原書で読むのがいいのか軽く解説しておきます。
理由はズバリ:
「原初の方がスペルミスなども何を書いているか分かりやすく、あざとさがない」からです。
実際にチャーリーが最初の頃にしていたスペリングミスは僕も英語を習得した手の時にしてました。
なので絶対に英語版の方で読んでください!
注意点
重いテーマ 物語の特に中盤(なぜ終盤じゃないのかは物語を読んでください)が結構切なくて(僕は泣くことはなかったのですが)一部の人にとっては若干重めに感じるかもです。 少し最初は薄い→もちろん後半は綺麗なのですが、前半は少し読みづらいです。最後まで頑張って読めば少しずつ読みやすくなります。
最後に
『アルジャーノンに花束を』は、SF文学でありながら哲学的、心理学的なテーマを内包する傑作です。頭の良さ、実験倫理、恋愛、人間、幸せ、そして人生… これらの全てについて深い考えが得られる本が「アルジャーノンに花束を」です。
ぜひ、この感動的な物語を手に取り、自分自身の人生についても考えてみてください。
皆さんの人生にこの本が役立ちますように。
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